チュートリアル      2021.01.29

脱・モーション初心者!つまずきがちな基礎項目【タイミング編】

キャラクター動かしてみたけど、これで合ってるのか心配…
プロの人って何に気を付けてモーション作ってるんだろう…
という方のために、モーション制作で押さえるべき基礎事項をおさらいしていくコーナーです。

登場人物

モモ

まだ駆け出しの入社2年目。謙虚に学ぶ姿勢を忘れない。特技はアクション。

FOX

モモのお供。もともと彼も若き3DCGアニメーターであったが、
臆病な自尊心と尊大な羞恥心をこじらせてこんな姿になった。今もプライドだけは一丁前。

仙人

モモの師匠。忍としてもモーションデザイナーとしても超一流の存在。
徳川慶喜を生で見たことがある。


さて、タイミングとスペーシングの話じゃ。

よろしくおねがいします!

そもそも違いが分からん。
そのふたつ。

タイミングというのは、一言でいえば「」じゃな。
キーポーズとキーポーズの間にどれだけ尺を割くのか。
一方、スペーシングはその尺の中での「緩急」のことを指す。
同じ尺でも、その間で速度の変化をどうつけるかによって印象が変わるぞ。



んー。分かったような、分かってないような。

わたしもこの違い、なんとなく分かる…けど
説明するってなるとわちゃわちゃしちゃいます。
カタカナだし余計に…

まあ、横文字で呼ぶかどうかは別として
それぞれの要点さえ押さえておれば問題ないじゃろう。
正直ワシも「スペーシング」よりは
「緩急」とか「メリハリ」という言葉を使うことが多いかの…。

それはさておき、
まずはタイミングの話を中心に解説してゆくぞ。


イメージ表現とゲーム的な見栄え

タイミングを決める際にも、受け手にどんなイメージを印象付けたいのか
客観的な視点に立って考えねばならぬ。
ゲームモーションならば、加えて「ゲーム性」…
操作感やテンポ、わかりやすさといった点も吟味が必要じゃ。

前回お話されてた「考え方」が
タイミング作りでも大事ってことですね~。
ちゃんと伝わるように、理由・意図をはっきりさせとく、と。

そういうことじゃ。
具体的に攻撃モーションで説明してみよう。
モモ、傀儡として少し分身を借りるぞ。

はいっ、おねがいします!

格闘アクションという想定で、小太刀を用いた軽めの斬りつけ攻撃を作ってみよう。
AB、ほぼタイミングだけの違いじゃが、それぞれどんな印象を持ったか?

Aは、なんかモッサリして見えなくもない。
俺が操作するならBがいいな。

そだね!Bのほうがゲーム映えしそう!
短刀だし、軽めの攻撃ってことだから
タイミングも素早いほうがいいですね。

逆にAの尺の使い方はちょっと強めの攻撃っぽいから、
もっと前に移動させたりポーズの変化を強くつければ
かっこよく見えるんじゃないかなあ…。

うむ。モモの説明が完璧じゃな。

Aは、現実の動きと同じくらいのタイミング。
ゲームの弱攻撃としては操作感が重すぎるの。

一方Bは、ゲーム性を考慮してタイミングを調整したものじゃ。
こういうふうに、仕様に合致するものを作らねばならぬ。

実際に自分で動いてみてリファレンスを撮ることも多々あると思うが、
それをそっくりそのままモーションに落とし込んだだけでは
いまいち見栄えに欠けたりするのう。

アクションゲームのキャラクターって、
現実の人間よりもけっこう速く動きますしね。
ゲームのスピード感にあわせないといけないし…。

うむ。
モーションキャプチャで実際のアクターの演技を取り込んで制作する手法もかなり一般化してきたが、
それでも最初の工程で尺を調整する作業が必ず入るものじゃ。
ゲームの仕様やキャラクター表現のために、タイミングをデフォルメしてゆく

でも、こういうのってさ、
結局作る奴のセンスによるんじゃねーか?
俺は…とりあえずリズム感でタイミング決めてたけど。
ダン、ダダン、、ダン! …みたいな。

確かに、人によりセンスの差は存在する…。
気持ちの良いテンポ感というのもそうじゃが、
モーションの難易度が高くなるほど
そういったセンスもより要求されるじゃろう。

じゃが、ゲームはタイミングのセンスを培ううえでも優れた教材になる。
実際にキャラクターを操作することで、作り手が考え抜いたタイミングを体感できるわけじゃからな。

モックスで初めて格闘ゲーム遊んだんですけど、
何回も戦ってると技のテンポ感を体が覚えてきますね。
寝る前に走馬灯みたいにモーションがうかんで…

で、強くなった?

…。

ほほ。
別に勝てずとも、遊ぶことがモーション作りに活かせるなら良いではないか。

…とまあセンスの話をしてしまったが。
初心者ならばどちらかというとロジック…
理屈を土台として考えることを先に身に着けてほしい。

ふむふむ。まずは理屈…っと。


動作の大きさと尺の長さは比例する

たとえば、
何かアクションをするならば、その動作に見合うだけの間が必要じゃ。
大きな動作になるほど、それだけエネルギーを準備するのに
時間を要するし、動作のあとの反動も長くなる

ジャンプ動作が分かりやすいかの。

ちっこいジャンプなら予備動作も一瞬で済みますけど、
おっきいジャンプだったら力をためる時間が要りますね。
着地したあとの反動も大きいし…。

大きく跳ぶなら、現実よりも滞空時間を長めに作ると見栄えが良いのう。
これもゲーム性を考えてのデフォルメじゃ。

もう少し付け加えるなら、スクワッシュ/ストレッチの度合いも考慮すべきじゃな。
大きい動作ほど、体をしっかり曲げ伸ばししてエネルギーを生み出す必要がある。

だからそれにあわせて、力をためる/放つ時間も考える…と。
わたしも初めはちぐはぐなモーションつくってたっけ…


いろいろ整合性がとれていないモーションの例
(ジャンプ斬り上げ攻撃)
項目フィードバックするなら…
体の伸縮・ジャンプ力をためるため、予備動作はスクワッシュが望ましい
・大きくジャンプした後なのに、着地ポーズが淡泊(もっと腰を落としてスクワッシュ)
タイミング・尺のバランスがいまいち(予備動作:ジャンプ=5:5)
ジャンプ攻撃に目が行くような尺の比率にしてみる
 ★大技に見せたいなら、ジャンプの尺を延ばす
 ☆軽やかに見せたいなら、予備動作を短くする
・大きくジャンプした後なのに、着地の尺が短すぎる
スペーシング・全体的に動きがガタガタ
・斬り終わりのポーズで滞空してから、スタッと着地にすると見栄えが良い(動きにメリハリをつける)

ポージング、タイミング、スペーシングがばっちり合って
初めて良いモーションが生まれるもの。
慣れぬうちはこれらがうまく合致せず、結果として
動きと整合性がとれていないモーションになりがちじゃ。

あっち立てればこっち立たず…で
作ってる最中によく頭が混乱してました…。
あはは…。

まあ、いきなり複雑なアクションに挑戦するよりは、
まずシンプルなモーションを着実に仕上げていくほうが
思考も整理しやすく、基礎を定着させやすい
とワシは思うておる。
チャレンジ精神があるのはとても良いことじゃがな。ほほ。

まあ俺は最初から完…


「余韻」の尺の目安 ~シンプルな攻撃とダメージの例~

なにごとも、動作には反動が伴う。
攻撃したあとも、少し余韻があってから元の姿勢に戻る。

プロの格闘家はこの余韻のスキを見せない努力をしておるから強いんじゃが…

でも、アニメーションとして考えたときに
どれだけ余韻を残せば分かりやすいんだろう?
ってのも迷うポイントですね~…。

うーむ…。
アニメーションとしての見栄えとリアリティのバランス、
決まった答えが無いゆえになかなか難しいところじゃが…。

ゲームモーションの場合じゃが、
単純に感覚だけで余韻のタイミングを探っても良いが、
もしセンスに自信がないのであれば、
全体に占める割合」という観点から冷静にモーションを見てみると、
目安がつかみやすくなるかもしれんな。

はじめは感覚なんてわかんないしオロオロしますもんね…。
なにか根拠とか目安があればタイミングも決めやすそう!

割合…。分かったような、分かってないような。

割合からベストなタイミングを探る考え方は、いたって単純じゃ。

全体の尺の中において、占める割合が大きい動作は印象に残りやすい
じゃから、全体の尺の中で、
見せたいメインの動作を長めに、
そうでもない動作は相対的に短くなるように

尺のバランスを調整すればよい。

シンプルな攻撃モーションを例に、
余韻も含めた攻撃動作待機に戻る動作のバランスを見てみよう。

なるほどー、このモーションなら
余韻も入った「攻撃」の尺
5割だと「戻り」の印象のほうが強く出ちゃう
逆に7割超えると「戻り」が早送りにみえますね

仕様で総フレーム数が決まってることはよくあるから、
こういう目安があると作りやすいかも!

さよう。
パンチや斬りつけのようなシンプルな攻撃であれば、
余韻含めた攻撃パートが全体の6割前後を占めるくらい
印象が伝わりやすい目安
かの。

この目安を頭に置きつつ、さっきワシが言うた、
大きな動作ほど反動の尺も長くなる」という法則を
状況にあわせて織り込められれば尚良しじゃ。

きわめて軽い攻撃なら、余韻は短くして
攻撃パートが5割弱とか
重い武器を振り回すなら、余韻を長くして
攻撃パートが7割といった具合に、
「余韻」と「戻り」の尺を調整してみてほしい。

大剣ふりおろす攻撃とか、自分で撮ったリファレンス通りに作ったら
攻撃よりも戻りに尺使いすぎて、モタモタモーションになったりしましたね、わたし…。

そうさな。
重さ表現に気を取られすぎて、全体の尺のバランスを見落としてしまう…というのは
新米によくあるミスかもしれんのう。
とかく、重量武器は考えることが多く初心者泣かせじゃ。
モモもあの頃はよく泣いておったな、うまくできないと言うて…

回想シーン

あーっっ!
お、思い出さないでください!
はずかしい過去を…

年寄りは昔話が好きなもんでな。
すまんすまん。

与太話はおいといて…
攻撃以外でもこの考え方使えるのか?

うむ、例えばダメージモーションでも同様じゃ。

①ヒット
②のけぞる
③耐える
④戻る

と動作を分けるなら、③を長く見せれば
痛がっている印象を強く残すことができる


これも、①~③のやられパートが6割前後になればよい目安かと思うぞ。

なるほろ。

わたしは、
おっきなボスキャラのダウンモーションとかだと、
耐えるとこを長く見せてから倒れこむ感じで作ったりします!
「断末間」って勝手に呼んでるんですけど…

▲ 「断末間」の例。散り際が華ですよ。

よい心がけじゃな。
ボスを倒したときの爽快感にもつながるゆえ、
そういったタイミングの工夫ができると品質も上がるのう。

次回はスペーシングについて詳しくみてゆこうぞ。

AUTHOR

Yu